人間の心身の健康を支えるには睡眠が必要不可欠である。しかし、現代の日本人は睡眠が足りていないということに目が向けられつつある。日本の睡眠事情について、日本眠育普及協会代表の橋爪あきさんに話を聞いた。
なぜ日本人は睡眠が足りていないのだろうか。諸外国の睡眠時間平均、約8~9時間に比べ、日本の睡眠時間平均は7時間と少ない。その原因として橋爪さんは、「日本人は睡眠時間を削って働くことで世界において成功してきた。その影響から、睡眠を削ってまで働くことを美徳とする思考が根付いてしまっている」と話す。だからこそ、日本に睡眠に関する教育を施す必要があるのだ。
睡眠中の熟睡は35歳を境に、だんだん短くなっていく。短くなるにつれて生活習慣病のリスクや免疫機能への悪影響が増えていく。それを防ぐためには、夜だけではなく日中の生活習慣にも注意を払っていくことが大切である。中高年は、体の不調などから、睡眠不足に敏感になっていくため、手を打つことができる一方、若者は活力があるため、自分の睡眠不足に気づきにくく、より睡眠不足問題が加速する傾向にあると橋爪さんは警鐘を鳴らす。
睡眠不足症候群という言葉を耳にしたことはあるだろうか。慢性的な睡眠不足が心身に影響し、日常生活に支障をきたすことをいう。睡眠中、人間の脳は記憶の固定に努める。その際、言葉や数字の記憶だけでなく、感情の記憶も処理される。睡眠時間の減少はそのようなメンタル面の安定をも奪い、学力不振やうつ病につながりかねないのだ。
十分な睡眠をとるためには、夜更かしを改め、最低でも最低30分前からはスマートフォンを見ない、起床就寝を規則正しくする、朝日を浴び外気に触れるなど自分の心と体を守るのは自分自身である。日々のストレス、疲れを癒す最高の処方箋は十分な質の良い睡眠であろう。