理工学部物理・数理学科の坂本貴紀教授の国際共同研究グループは、昨年3月に報告された新天体Swift J1818.0-1607が、稀有な中性子星の一種、「マグネター」であることを突き止めた。中性子星の研究の進展が期待される。
中性子星は、太陽と同じくらいの質量で半径が約10キロメートルという天体で、その密度は角砂糖1個の大きさに全人類の重さを押し込めた状態に匹敵するほど超高密度である。その内部は原子核の密度を超えるため、原子核物理学や重力波天文学の研究において注目されている。これまでに中性子星は、銀河系を中心に2800天体ほどが見つかっているが、その中で「マグネター」は、最も磁場が強い天体である。また、現在はまだ20天体ほどしか知られていない。
2020年3月12日、アメリカ航空宇宙局(NASA)が運用するスウィフト衛星に搭載されたガンマ線バースト観測を目的とした検出器が、継続時間10ミリ秒ほどのX線のバースト現象を検出し、その方向に新天体Swift J1818.0-1607が発見された。その後、坂本貴紀教授らの国際共同研究グループは、国際宇宙ステーションに搭載されたX線望遠鏡NICERを用いてバースト検出から4時間後に追観測を開始し、1.36秒後の周期的な信号を検出した。それらを組み合わせることで、Swift J1818.0-1607が宇宙で最強の磁石星といわれる「マグネター」であると突き止めることができた。
中性子星の大多数は、回転エネルギーで光る「電波パルサー」という種族である。その一方で「マグネター」は、他の中性子星よりも自転が遅いことから回転エネルギーではなく、磁気エネルギーを開放して輝いている。今回発見されたSwift J1818.0-1607は「マグネター」として振る舞いつつも、「電波パルサー」の特徴をも兼ね備える特異なものだ。「今後、中性子星の進化を理解する上で、異なる種族を結びつける架け橋になるのではないか」と坂本教授は期待している。
坂本教授は「今回行ったような連携をし、まだまだ眠っているであろうマグネターをどんどん発見していきたい」と今後の展望を語っている。