ほほえむ大高さんと先生達

「普段、長時間パソコンやスマホを使っていたら思わぬうちに熱くなり、電源が急に落ちてしまった、そんな経験をしたことはないでしょうか」。そう話すのは可視化シンポジウムにて、スライドを利用した研究発表を行い、見事ベストプレゼンテーション賞を受賞した大高裕矢さん(院2)だ。大高さんが研究している自励振動型ヒートパイプとは、斬新な熱輸送デバイスである。1本の細い管を何往復もさせた構造をしており、真空状態の管内において作動流体が蒸発と凝縮を繰り返すことによって熱を輸送する。また、伝熱性が非常に高く、なんと銅の10倍から100倍ほどの効果で熱を伝えることができるため、実用化に向けての期待も高まっている。

だが一方で、内部で生じている現象は非常に複雑で解明されておらず、その多くは謎に包まれている。そこで大高さんは、内部の流動と温度場を可視化する研究に力を入れてきた。研究室の先生達からの勧めもあり、また「可視化」というキーワードが研究に当てはまるため可視化シンポジウムの参加へと至った。

今回のシンポジウムはオンラインでの開催であり、通常の発表と異なる点もあったそうだ。例えば、視聴者が画面をオフにしており相手の反応が見えない難しさもあったという。だからこそ、「カメラに向かって固い表情ではなく、笑顔で発表することを意識した」と振り返る。そして何より、研究室内の友人や教授など複数の人に発表の練習を見てもらうことで、自信を持って当日に挑むことができた。その努力が実り、研究成果と発表が評価され見事受賞へとつながった。

大学院卒業後は、企業の研究職の道に進む大高さん。大学院での学びや研究の経験を通して、私たちの暮らしが変わる日もそう遠くないのかもしれない。