一般社団法人日本音響楽会2021年春季研究発表会で学生優秀発表賞を受賞した杉本理乃さん(院2)。発表した研究内容である三線における胴と振動の音色の関係性と研究テーマの展望について話を聞いた。
一般社団法人日本音響学会における学生優秀発表賞とは、将来の音響学の発展を担う若手研究者を奨励するために設けられた賞で、研究発表会で優秀な発表を行った者に贈呈される。
杉本さんが受賞したのは日本音響学会2021年春季研究発表会の音楽音響分野。研究では沖縄の伝統楽器である三線について発表した。そんな珍しい楽器を用いた研究内容とは、一体どのようなものだろうか。研究内容について杉本さんに話を聞いた。
今まで、三線の職人は音色において棹が重要であるとして、胴を重要視していなかった。杉本さんはそこに注目した。他の弦楽器で胴は重要であるから、三線も同じ弦楽器として重要であると証明することを研究目的とした。
実験および数値シミュレーションによって音に変化があるか検証したところ、棹の振動によって胴の木枠の振動が変化した。さらに音の放射部分である膜の振動に影響を与えたことが判明した。)このことから棹だけではなく、胴が音色において重要な役割を果たしていると証明した。
このように素晴らしい研究成果を出した杉本さんには、芸術系の研究をしたいという思いがあった。研究テーマを選ぶ際に、三線という新たな研究分野を切り開きたいと考えがあり、選んだという。
研究で苦労したことを聞くと、「三線は他の研究に比べて研究事例が少なく、自分の力で研究に臨まなければならなかった。しかし、同じくこの研究をしている西宮康治朗助教のおかげで、二人三脚で頑張ることができた」と当時を振り返った。
最後に、研究テーマである三線の展望について、「今回の研究で科学的に証明することが、いかに大切かわかった。今後は楽器の音の原理などを職人の勘や経験からではなく、自分の研究をきっかけにして科学的に証明されていってほしい」と楽器音響学への期待を込めて語った。