3月12日、文学部佐伯眞一先生による講演会がオンライン開催された。

講演中の佐伯先生

 講演タイトルは「『軍記物語』ができるまで」。平家物語を引き合いに出しつつ、その構成上の特徴や、「そもそも軍記物語という言葉が使われるようになったのはいつからなのか」といった問いまでをも解説していた。その中の「軍記物語を『武士の価値観』からのみで読み進めていってしまうこと」への警鐘は、文学分野だけではなく、他の分野においても「複数の価値観から文献を読み進める」という点で必要なことであり、我々大学生も日頃から意識しなければならないことだと感じた。

「平家物語の一番の魅力は、弱者を正面から惨めに書きつつも、そこに同情と共感が見えるところ」だと語る佐伯先生だが、その研究には多くの苦労があったそうだ。延慶本平家物語と呼ばれる写本の翻刻をした際には、「崩し字を読み、他の写本と比べ意味を取るという大もとのテキストを読み取る作業には莫大な時間がかかった。ようやく定年直前になって完成させることができた」という。

1995年から長きに渡って本学で勤務してきた佐伯先生は、2020年度定年を迎えられた。「いろいろなことがあったが、幸せな時間を過ごせた」と四半世紀を振り返った。「わかったつもりでいたけど、自分は何もわかっていなかった、ということを見つけて、それが本当にわかるようになるまで勉強してほしい」と最後に学生へのメッセージをくれた佐伯先生。諸行無常の世の中において、「変らぬもの」を持つための近道となる言葉だ。