高級なコスメ、いわゆるデパコスをずっと買ってみたかった。でも普通のコスメよりも値段が高く、手に取りづらい。何より売り場に入るハードルが高かった。しかし、ある時勇気を出してデパコスを買いに行ってみたことがある。

自分が一番持ちたいデパコスはなんだろうかと考えたときに、真っ先に出てきたのがシャネルのリップ。そのため、シャネルの売り場に向かった。しかしコスメの知識がない私にとって、無数の色の中から自分にどれが似合うのかが分からなかった。とりあえず、無難そうな色のリップを買った。

すぐにデパートのトイレに駆け込んで、買ったリップをつけてみた。正直一人では似合っているのか、よく分からなかった。けれど、シャネルを買おうか迷っていたときにふと考えていたことを思い出した。もしかしたら、買っても似合わないのかもしれない。でも似合う、似合わないよりも、あのシャネルのリップをつけているという少しのキラキラした自信のようなものが欲しかったのだと気づいた。

今まで、心のどこかに化粧とはある年齢になったらしなくてはならないものという思いがあったが、考え方が変わるようになった。そのリップを塗ったときに気合が入るものとなった。今でも、黒くて光沢のあるリップの表面を手でなぞる。コスメとは美しくなる意味合いと共に、自信をつけるお守りのようなものなのかもしれない。(望)