高エネルギー・重力波天文学をテーマとする、理工学部物理科学科の坂本研究室。昨年に宇宙へと打ち上げた超小型人工衛星「ARICA(AGU Remote Innovative Cubesat Alert system)」について、坂本貴紀教授に取材をした。
ARICAは、ガンマ線バーストの発見を即座に地上へ知らせる新しいシステムを、衛星上で実証するために開発された。ガンマ線バーストとは突発天体現象の一つ、宇宙のどこかで瞬間的に大きなエネルギーを放ち、明るく輝く天体現象だ。その正体の多くが未だ解明されていない。ARICAは、ガンマ線バースト発見の情報を地上ではなく民間の通信衛星に送ることで、即座に地上で情報を受け取ることが可能なのではないかと考えられている。
ARICAのプロジェクトについて坂本教授は「衛星を計画し、開発予算を獲得し、衛星を製作し、打ち上げ、運用するという最初から最後までを経験したのは初めてだったため、困難の連続だった。しかし研究室の優秀な学生が、自分たちの手で作り上げた衛星を宇宙へ飛ばすという目標に向かって、それぞれの役割を確実に果たしたため、何とか達成できた」と語る。
しかし打ち上げから半年以上が経過したが、ARICAのデータの送受信に一度も成功していない。現在も定期的にデータを送信し衛星の応答を確認するという運用を継続しているが、応答はないそうだ。
研究推進に必要なデータが受信できていないという現状を踏まえた坂本研究室は、本年度、本学総合プロジェクト研究所「超小型宇宙機研究所」を立ち上げた。最初のプロジェクトとして再挑戦ミッション「ARICA-2」の開発を開始し、2024年から2025年の打ち上げを目指している。ARICA-2には、ARICAで実証する民間衛星通信を用いた速報システムを搭載するだけでなく、地上と衛星が直接通信できるように、アマチュア無線帯を用いた送信機の搭載も検討しているという。また多くのガンマ線バーストを観測できるように、ARICAよりもガンマ線検出器を大きくしたいと考えている。壮大なプロジェクトの今後に大いに期待したい。