大学で開講されるゼミナール授業、通称「ゼミ」に対し、どのような印象を持っているだろうか。学生が研究室に籠って、ひたすら専門分野を極めるといったような堅苦しい印象を持つ人もいるかもしれない。しかし実際は、そのような難しい授業ではないようだ。
ゼミとは、学生による発表と討論が中心の、少人数の授業のことであり、講義科目と区別して「演習科目」とも呼ばれる。少人数という特色を生かし、机を向き合わせて互いの顔を見ながら話し合う。そのような学生主体のゼミという講義形態は、本学では一体いつ頃に始まったのだろうか。教務課によれば、文学部や経済学部などの伝統的な学部については、正確な情報は不明だが、2000年代に開設された学部では、ゼミは学部開設時から開講されているという
では、講義科目とゼミは何が違うのだろうか。講義科目では、基礎的な知識の習得を目的として教員が中心となって授業が進められる。一方ゼミでは、下級年次で習得した知識を基に、上級年次において専門的に研究等を行い、その成果を卒業論文にまとめていくというスタイルで授業が運営される。そのため、学生が主体的に授業に参加することが求められる。講義科目とゼミは別物として捉えられがちだが、実際は講義科目で得た知識をゼミで発展させるという点で、密接な関係にある。
そしてゼミ最大の特徴は、学生と教員との密なコミュニケーションである。ゼミでは、学生の研究成果や調査について、教員と学生とがディスカッションを重ねることで、より専門的な知識を学ぶことを目指す。また、調査についても、自分一人で行うのではなく、複数のゼミ生が協力して実施するため、ゼミ生同士の絆が深まるというメリットもある。
以上のようにゼミは、授業を通じて、今まで習得してきた知識をさらに専門的なものにするとともに、主体性、積極性、協調性などを身に付けることを目的として開講されているのである。理工学部のように、ゼミが必修科目である学部を除き、学部・学科により違いはあるものの、毎年5~7割の学生がゼミを履修するという。
実際、ゼミの授業はどのように行われているのだろうか。以下は、本学の文学部日本文学科のゼミの様子である。
『源氏物語』を扱うゼミでは、各時間に扱う範囲と発表を担当する人が予め決められ、授業の前半で発表者が先行研究を整理して、解釈上の問題点、疑問点を説明し、後半は発表を踏まえた上で討論する。発表のために、『源氏物語』の自筆本を手で写した写本を何冊も比較し、「なぜ写本によって本文中の句読点の位置に違いが生じているのか」、「そうした写本ごとの本文の差異により、解釈はどう分かれるのか」といった論点を、先行研究も踏まえつつ調べ、疑問点を明らかにする。発表を終えたら、学生、教員関係なく、発表者の解釈に抱いた疑問や、自分が事前に考えた別の解釈を次々に口に出していく。 活発な議論を行うために、発表者だけでなく、ゼミに参加する学生全員が当該箇所について事前に調べ、自分なりに疑問点や意見を持った上でゼミに参加する必要がある。しかし、そのような骨の折れる作業を毎時間こなすことで、たとえ口に出した疑問や解釈が間違っていたとしても、それを皆で議論すると、さらに内容を理解できる。
「自分の知識が深まる喜び」、これを味わうことができるのがゼミの醍醐味なのだ。