昨年12月上旬、本学青山キャンパスにて、シンポジウム「人文学の挑戦:近現代のマイノリティ文化をめぐって 〜5つの視点から読み解く世界の陰影〜」が、対面・オンラインのハイフレックス形式で開催された。シンポジウムを主催した本学文学部附置人文科学研究所所長の水野千依さんに話を聞いた。
文学部附置人文科学研究所は、文学部の5学科(英米文学、フランス文学、日本文学、史学、比較芸術学)の教育と研究を、よりグローバルに、また学際的・有機的に運用するという学部創設以来の理念を達成する組織として、2019年4月に設置された。「日本および世界各国の文学・言語・文化・歴史・芸術・コミュニケーション研究の、人文学を基礎とした教育と研究活動を推進すること、およびこれらの学問研究の学科および研究科専攻の枠を越えた、多国間的かつ学際的な連携を図ることを目指していると水野さんは語った。教員間の学術活動のみならず、学生に対しても、学科・研究科の枠を越えた教育的な体験と、学際的な研究を支援する場を提供していくことを目指しているという。
具体的な活動としては、複数のプロジェクト・チームによる研究活動に加え、毎年、講演会やシンポジウムの企画・主催を行っている。さらに年に1回、『文学部附置人文科学研究所論叢』を刊行し、講演会・シンポジウム・プロジェクト等の報告、文学部の教員・大学院生の論文、研究ノート、翻訳等を掲載しているという。
今回のシンポジウムは、そうした活動の一環として、またコロナ禍により困難となっていた学内での教員・学生間の知的交流の場を提供することを目的として開催された。西洋中心主義的で啓蒙主義的な「普遍知」や「正史」に抗い、そこから取りこぼされてきた微細な世界の陰影を掬い取る試みとして、文学部5学科の各領域を代表する学内外の気鋭の先生方が登壇した。クィア、少女、ユダヤ、奴隷、女性といった近現代のマイノリティ文化を題材として、次世代を見据えた人文学の可能性が熱く討論された。文学部だけでなく、他学部の学生にとっても、普段の講義では学びえない研究領域を知る貴重な機会となった。
最後に、研究所の今後ついて、「活動の幅を広げ、ぜひ国際シンポジウムを開催したい」と水野さんは語った。