NHKの元エグゼクティブアナウンサーで第28代アナウンス室長を務めたのち、現在は跡見学園女子大学文学部コミュニケーション文化学科の教授を務めている渡部英美さん(78年度・日卒)。幼い頃からアナウンサーを目指していた。

学生のうちにしておくべきこととして「具体的な経験なしに将来は語れないため、就活に直結する経験と自分を大きくするために楽しむ経験をするべきだ」と話す。プラスばかりでなく、マイナスも経験し、それを補って余りあるプラスが獲得できるかが、大切だそうだ。渡部さんは、プロの放送局の様子を知るために、東京の民放のラジオ部門の技術のアルバイトを週1回4年間続けた。アナウンサーと同じ台本を渡され、ラジオの中継車から出る電波を計測し、位置決めをしてスタジオにつなぐ仕事は、とても大きな経験だったという。また、ほとんど中国と民間の行き来が無かった時代に、日中友好協会の仲介で学生友好使節団に参加した。そこで、国のあり方で文化が大きく異なることを肌で感じたという。

学生時代は真面目と不真面目が同居していたと振り返る。当時青山キャンパスの近くには麻雀屋があり、2階の窓から数少ない日文の男子学生に声をかけられ、「やむを得ず」と正当化して、一日無駄に過ごしたこともあったという。ゼミの教授と学生で東北地方を旅したり、ゼミのステッカーを千社札にして持ち物に貼ったりと仲間で楽しく過ごしたそうだ。就活では、アナウンサーと高校の国語の教員の二つの仕事を選んだ。大好きな国語を教えながら、放送部の顧問をするのが夢だったという。「テレビやラジオの持つ速報性に対応できる、取材力のあるアナウンサーになりたかった。後に、昭和天皇の崩御に際して連日皇居前から中継をしたり、ディレクターとしてNHKスペシャルを制作したりして型破りなアナウンサーになれたのも、学生時代からの強い志向があったからだと思う」と話す。
  「絶対にこの仕事に就くという希望は大切だが、なりたい仕事にうまく当てはまるかは、相手があってのことで、うまくいくとは限らない。そのため、第一希望の職種、第二、第三と異なる職種を準備することを勧める。準備は3年生になってからではなく、少しでも早いほうがいい」とアドバイスを送った渡部さん。最後に「何をしたいか、何になりたいかを考えることが大切だ。例えばアナウンサーになりたいと決めたら、東京キー局だけでなく、地域の放送局、CATV、ラジオ単営局、コミュニティFM放送局も受けるべきだ。逆にどこで働きたいかをメインにすれば、その地域の中で幅広く就職先を探せると思う。いい仕事に就けるように、仕事が一番でなくてもいい人生を歩めるように、先輩として願っている」と学生へエールを送った。

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