ロシアがウクライナに侵攻を開始して1年以上経過した。激戦区では、避難を余儀なくされる人々がいる。そのような難民を支援する活動に参加した本学学生がいる。

日本財団ウクライナ避難民支援の学生ボランティアとして、ウクライナ近隣諸国に派遣された伊藤俊輔さん(国経3)に話を聞いた。伊藤さんは、「報道だけでは分からないことを自分の目で見て確かめたい」という思いがこの支援に参加するきっかけとなったと語った。

伊藤さんは、ハノーバーとフランクフルト行きの電車に乗る難民のスーツケースに、行き先のシールを貼るボランティアをしていた。避難に使う無料の電車は、2日に1本しかない。一度に全員が乗れたわけでもなく、ウクライナの白人系の人やスラブ系の人が優先され、ロマの人々が後回しにされる光景を目の当たりにし、差別のようなものを感じることもあったそうだ。

電車にどれだけの人が乗れるか分からない中で、「早く電車に乗せてよ」と言われることもあったそうだ。しかし、全員に優しくして乗せてあげることはできなかった。その優しさがあっても、乗れなくなってしまったときに却って仇になってしまう場合があるからだ。常に苦渋の選択をする中で、「見切り発車での支援をしてはいけない」ということに気がついた。

伊藤さんは、ウクライナから他の場所に移動するための中継地としての一時滞在施設を他の海外ボランティアと構想したり、プシェミシルに一時的に避難している方々にお弁当の配達も行ったりした。

一番印象に残っていることとして、支援活動をしている中で伊藤さんに怒ってくる女性がいたことを挙げた。ウクライナ語であったため、最初は何を言っているのかわからなかったが、その女性の付き添いの人が戦争で家族を亡くしてしまったと説明してくれたそうだ。家族を亡くした悲しみをぶつけられた伊藤さんは「戦争は大切な家族を奪う」という現実を痛感した出来事になった。この出来事を振り返りながら、「現地ボランティアでの支援も大切だが、戦争を止めるには政治的問題も解決していかなくてはならない」と語った。

今回の経験を通して、「ボランティアだからと言ってなんでもできるわけではないが、ウクライナ問題も含めて世界中に困っている人がいることを知ることが大切」と教えてくれた。現地に行かなくても、支援物資を送ることや募金をするなど小さなことから始めることも彼らの力になると、伊藤さんは語る。