ミュージカルを通じて障がいや病気を持つ子どもたちに生きる喜びを伝える心魂(こころだま)プロジェクト。団体の代表で本学OBの寺田真実さん(95年度・国経卒)は「ミュージカルやパフォーマンスで子供たちになるべく多くの選択肢を与えたい」と話す。
寺田さんは本学を卒業後、CITIZENで海外を飛び回る営業マンとして活躍していた。しかし27歳の時に『壁抜け男』のミュージカルを観たことをきっかけに、会社を辞め劇団四季のオーディションを受けた。見事に一発合格した寺田さんであったが、劇団四季に届いたとある自閉症の男の子の母親からの手紙が大きな転機となる。手紙には、男の子が10カ月もの間自閉症の症状と戦いながらも一人で劇場に足を運べるよう一人でバスに乗るなどの特訓をし、ついに自分の足で劇を観に行くことができたことが書かれていた。このことを知った寺田さんは「会場に来ることさえ難しい人たちがいる。劇場で待っている限り彼らに舞台を届けられないのなら、自分たちから行くしかない」と思い、13年所属した劇団四季を辞め、心魂プロジェクトを立ち上げたそうだ。
難病の子どもたちのもとを直接訪れてパフォーマンスをする心魂プロジェクトでは、自分で踊ることが好きな子どものために一緒に踊る演目を追加したり、症状に合わせて歌い方を変えたりして工夫しているという。寺田さんは「ミュージカルは人間が昔から楽しんできた歌や踊りがふんだんに盛り込まれたもの。だからこそ、その場で演者と観客が一緒に参加して楽しめることがミュージカルの素晴らしさだと思う」と笑顔で話す。また、それまで観客側だった子どもたちが演者側になる心魂キッズ団を立ち上げ、活動の幅を広げている。今後も、誰でもミュージカルを楽しめるような選択肢を増やしていきたいと意気込みを語った。
最後に、本学学生に向けてメッセージをもらった。「大学の良いところは、一生付き合っていける人に出会えること。レールに沿って生きるのではなく、自分を信じて、自分がやりたいことに全力で突き進んでほしい」と、寺田さんらしい言葉を送ってくれた。