相模原キャンパス所属の学生が絶対に知っているパン屋といえば『スワンカフェ&ベーカリーさがまち店』(以下スワン)。最寄駅から学校へ向かう際、店の前を必ず通っているからだ。今回は、店長の天野広美さんに話を聞いた。
全国に25店舗を構えるスワン。最大の特徴は、障がいのある人々を積極的に雇用し、彼らの自立と社会参加を支援していることだ。現在さがまち店では、36人いる従業員のうち24人が障がいを抱えている。
経営理念は「障がいのある人もない人も、ともに働き、ともに生きていく社会」。天野さんが店長として大切にしているのは、仕事を通して自信をつけてあげることだという。そのためには、彼らのモチベーション維持が欠かせない。工夫している点を聞くと「たくさんある。だけど、お客さんの『おいしいパンをありがとう』という声がやはり一番だと思う。障がい者は、普段からいろいろな人に助けてもらって、ありがとうと言ってばかり。でもスワンで働いている時間は、感謝の言葉をもらう側になれる。些細なことかもしれないけれど、これほどうれしいことはないと思う」と話した。
バリアフリーな環境を整えるために、厨房はさまざまな工夫がされている。例えば、冷蔵庫やオーブン、道具を入れるかごには大きく数字と簡単な説明が書かれている。その理由は「知的障がいをもつ人は、物事を順序立てて考えることに苦手を感じる傾向がある。番号をふれば混乱を防げるし、指示を出すときも簡単だから」と説明した。また、障がい者同士でペアになって作業を進めるのもこの店の特徴だ。「精神障がいの人は、失敗することを過度に恐れたり、ネガティブになったりしてしまいがち。そんなとき、明るい性格が強みである知的障がいの人と作業をすれば、足りない部分を互いに補える心強いパートナーになれる」と話した。厨房は、終始和やかな雰囲気が印象的であった。
最後に、天野さんは「ハンデがあっても、諦めないでほしい。スワンという場所が、社会になじむためのはじめのステップになれたら」と語った。今日も、できたてのパンとあたたかいコーヒー、そして彼らの笑顔があなたを待っている。