総合文化政策学部のクシェル・マイケル准教授は、音楽と文化が人や社会にとってどのような役割を持つのかという「音楽民族学」について研究している。その中でも日本で地域の人々が演じる手作りの歌舞伎「地歌舞伎」を岐阜県で研究してきたという。
大学生だった頃、仕事として音楽をやりたいと考える中で予備計画として、世界中の音楽を研究できる学者になれればと考えていたクシェル准教授。東京に短期留学した際にジャズクラブやライブハウスなどの多様な音楽文化に衝撃を受け、卒業後も日本で研究したいと考えるようになった。しかし、その後日本で学ぶための奨学金には地方で研究するという条件がついていたため、地方の文化について調べた結果、それまでは英語で全く情報がなかった地歌舞伎という世界を、それまでに聞いたこともなかった岐阜県で研究することに決めたのだという。
クシェル准教授は当時を振り返りながら、「地歌舞伎のコミュニティに驚くほど温かく歓迎してもらい、役者や三味線奏者としても舞台に関与させていただいた。いろいろと経験するうちに、元々ジャズやロックに求めていた『ライブ』の力が歌舞伎の中にもあるとわかった。同時に、伝統芸能を固定的に捉える研究や一般的なイメージがいかに偏った考えであるかを知った」と話す。伝統芸能について捉え直し、本当の面白さをどんどん発見したいという気持ちが、本学での教育の動機にもなっているそうだ。
本学学生の印象について尋ねると「授業外の楽しみや責任の伴う仕事などで日々忙しいのに意欲的に授業に参加してくれる学生が多い」と答えてくれた。「大学生になる、成人になる、社会人になっていくというプロセスは、もちろん楽しいこともいっぱいあるが、当然そればかりではないと思う。様々なプレッシャーや変化の中で頑張っているうちに、精神的にも身体的にも、自分のケア、また他者へのケアを忘れてしまうことがあるのではないか」と踏まえた上で「お大事にしてください」と学生たちにあたたかいメッセージを送った。