TOHOシネマズ学生映画祭では、現役の学生が制作した映像以外に、現在社会人になった人が学生時代に作った映像も応募対象としている。撮影や編集の技術ではなく、学生ならではの発想力や着眼点を評価しているのだという。今回はこの映画祭の実行委員長である尾竹栞さんと今年度から実行委員としての活動を始めた米田彩香さんに話を聞いた。
実行委員会の仕事は多岐に渡り、応募作品の審査から、昨年度受賞者へのインタビュー、映画祭を宣伝するポスターの制作、ポスターを設置する施設や大学への連絡まで、様々な業務を約20人のメンバーで行っている。特に、第一次審査と第二次審査については、200以上の応募作品を全て自分たちで観るのだという。
本番が近付くにつれて活動はほぼ毎日になるというが、実行委員としての活動におけるやりがいは何だろうか。2人に活動の中で印象に残っている出来事を聞くと、尾竹さんは去年の映画祭本番を挙げた。「審査員の中には現在活躍している監督やディレクターなどのプロが集まるが、本番後には実行委員も審査員と直接話せる機会があった。映画祭の振り返りや自分の今後の進路について話が聞けたのは価値のある体験だった」と振り返る。今後は映画に携わり、人の心を動かす職業に就きたいと考える尾竹さんにとって、実行委員での活動は実りある経験になっているという。
一方で、米田さんはこれまでポスターを設置してこなかった大学へ電話をかけたことを挙げた。電話をかけても断られることが多く、どうすれば話を聞いてもらえるのか試行錯誤を繰り返したという。今年度から初めて実行委員会に参加する米田さんは「200本もの映画を観ることは今までにない経験」としてこれから始める審査についての期待も口にした。米田さんに忙しい活動の中でのやりがいを尋ねると、新型コロナウイルスの影響で文化祭や体育祭などの行事が中止になってしまった自身の高校生時代を振り返る。そのような高校での思いを経て、実行委員として活動できている現在を「自分が一から作り上げているという経験が楽しくて仕方ない」と明るく語った。
17回目の開催となる本映画祭だが、同じ内容を繰り返しているわけではなく、毎回オリジナルの要素を足しているという。尾竹さんは「今年はSNSを通じた実行委員からの発信に力を入れている。応募する人がどんな情報を求めているのか考え、それに寄り添った情報を提供したり、来場者に興味を持ってもらうために、映画祭の魅力を発信したりしている」と話す。
最後に読者に向けてのメッセージとして、尾竹さんは「今はいつでも誰でも映像を撮ることができる時代。作りたいものや表現したいものがあればぜひ、スマホを持って外に飛び出して、映画祭に応募してみてほしい」と話した。また、米田さんは「応募者にとって、自分の作品が大きくスクリーンに映される機会は貴重。観客としてもぜひこの映画祭を体験してほしい」と話した。
未来ある監督の新たな才能が芽吹く瞬間、そして実行委員の努力の賜物を、ぜひ日比谷の街で目撃してほしい。