今年で日本上演35周年を迎え、5月27日夜公演を以って通算公演回数8000回を達成した劇団四季の『オペラ座の怪人』。パリのオペラ座の地下に棲み、歌姫クリスティーヌに恋をする怪人と、怪人からクリスティーヌを守ろうとするオペラ座の俳優ラウルの心情の交錯が、初めて観る人にも分かりやすいように描かれているのがこの作品の魅力だ。

 登場人物は皆、歌に乗せて感情を相手に訴えかける。クリスティーヌの歌、ラウルの勇気ある叫び、怪人の嫉妬、どれをとっても各々の感情が空気の震えから伝わってくる。特に、「歌え! 私のために! 」と叫ぶ怪人に応えるように、クリスティーヌの歌声が徐々に高音に転じていくと、会場全体に振動が伝わってきた。

 演出面では、シャンデリアが落下する際にフラッシュを焚いたり、怪人の住処にもうもうとスモークを焚いたりしており、冒頭から作品に没入できる仕掛けが満載であった。

 終演後、満員の観客から万雷の拍手が送られ、5度のカーテンコールが行われた。この日怪人役を演じた佐野正幸さんが、カーテンコール後も一人舞台上に残り、観客に向かって深々とお辞儀をし、そして手を振る姿が印象的だった。

大阪四季劇場で8月27日に千秋楽を迎える同作品。夏休みに、少し足を伸ばして切ない恋の物語に浸るのはいかがだろうか。