第3回目となったロボティクスのすゝめ。今回は、麻痺患者が着用する歩行アシストスーツを研究している石川輝さん(23年度卒・知技能ロボティクス研究室)に話を聞いた。

麻痺患者がリハビリテーションの際に使用する歩行アシストスーツ。中でも石川さんが研究対象にしているのは、足が完全に動かない重度の麻痺患者が使用するためのものだという。重度の患者に向けて研究を行っている理由を聞くと「現在、医療現場で使用されている歩行アシストスーツは、麻痺の度合いによって使用できない患者がいる」という現状を挙げた。脊椎損傷患者は日本国内だけでも10万人以上おり、毎年新たに5000人以上が患っているという。介護者不足が深刻化する現代に、このような技術の確立は欠かせない。

石川さんの主な研究内容は「身体情報や歩行時の関節角度を測定したデータを収集し、それを基に患者一人一人に合わせたスーツの動作を機械学習で生成する」というものだ。健常者と麻痺患者の違いを考慮しながら、実際に計算した値と機械学習で予測された値を比較・分析しているという。

最後に、研究に対する思いについて聞いた。「元々は研究室の先輩が3年前からしていたもので、それを引き継ぐ形でこの研究を始めた。先輩はスーツの姿勢保持についての研究をしていたので、自分がそれを患者一人一人に合った動きでアシストできるようになったら、もう少し実用的になるのではないかと考えた。実際の医療現場で使用されるには更なる開発が必要だが、今までやってきた研究がいつか人の役に立つことを願っている」と話してくれた。

石川さんはこの3月で本学を卒業したが、この研究はいつか重度の麻痺患者にとって大きな一歩となるだろう。