「並んでいるのか?並んでいるなら注文してくれ。一度に作った方が早いからな」。厨房の奥から香る油の匂い。チリチリという音が鳴るとそれは名物の唐揚げの合図。相模原キャンパスから徒歩14分の場所にこがねちゃん弁当はある。カリカリで肉厚な唐揚げと規格外の安さが他店にはない魅力なのだが、店主の酒井一記さんも名物店主としてリピーターから愛されている。今回は店主の酒井さんにこがねちゃん弁当の誕生と愛される唐揚げ弁当が生まれる経緯について聞いた。
高校卒業後、赤坂のアマンド会館にあった会員制レストラン『P.C.B』の見習い、米軍基地食堂のコック、松下政経塾のチーフコックと多くの厨房で働いてきた酒井さん。松下政経塾での経験の後に独立を考え、この地に店をオープンしたという。開店当初は唐揚げ弁当以外にも多くの弁当をそろえており、2003年に本学相模原キャンパスが開学する前から、トラックを利用して、キャンパスの建設現場で働く職人に向けて弁当の移動販売を行っていたそうだ。相模原とは30年以上という本学よりも深いつながりがあったのだ。
今や全国から客が訪れることもあるこがねちゃん弁当だが、実はUberEatsは断り続けているという。その理由を聞くと「お客さんにはおいしくニコニコ食べてほしい。だから食べている人の顔が見えないというのは自分の弁当のポリシーに反する」と答えた。こがねちゃん弁当は酒井さんのそれまでの料理経験の集大成と料理に対するポリシーの終着点でもあるのだ。
最後に安く大盛りで熱々の唐揚げを提供できる理由について聞くと、酒井さんの考える昼ごはんのポリシーを交えて語った。「自分にとっての昼ご飯はワンコインでお腹いっぱいになれるもののこと。学生や職人にとって手軽に食べられたら嬉しい」。多くの客を虜にする味と店主の信条がそこにはあった。

こがねちゃん弁当と店主の酒井さん