「繊細な動きが必要な化粧を、高齢者や体の不自由な人にも自由に楽しんでほしい」。そう話すのは、ロボットアームを使用したメイクアップの研究を行っている川﨑舜平さん(知技能ロボティクス研究室・院2)だ。
川﨑さんは現在、ロボットアームでアイブロウ(眉)を描くための研究中で、モーションキャプチャを使用した筆の動きの測定や、数理モデルの解析、制御(コントロール)のためのプログラムを書いている。今回は、マネキンにアイラインを引く様子を見せてもらった。
プログラムを動かし、しばらくするとアイライナーを持ったロボットアームがスムーズに動き出した。右目のラインは違和感なく仕上がったが、左目のラインは目の位置から少し外れてしまった。川﨑さんは「まだまだ改良が必要」と話したうえで「ロボットにとって、顔などの柔らかくて動くものに思い通りの線を描く操作は、机上の紙に線を書く操作よりもはるかに難易度が高い」と説明した。また「人が見て違和感のないメイクアップに仕上げるためには、濃さや太さも重要。筆の角度や当てる強さなど、細かく調節しなくてはならないことがたくさんある」と、この研究ならではの難しさを語った。
大学院からメイクアップロボットの研究を始め、来年度には卒業を控えている川﨑さん。卒業までの目標は「アイブロウをマネキンで実装すること」を掲げる。「実は、ロボットで化粧をする先行研究は世界中でもほとんど進められておらず、初めはどうしたらいいか分からなかった。先生や先輩の力を借りながら、ここまで進めることができた」とインタビューの最後には周囲への感謝を述べた。
いつかロボットがプロ顔負けのメイクアップを施してくれる時代になるのだろうか。I棟大型実験室は今日も、無機質な外観とは裏腹に、熱いロボティクスの世界が繰り広げられている。