今月号から相模原面では、本学理工学部の伊藤雄一教授の研究室『χⅬab.』での学生の研究を紹介する。

人間の歩き方には、重心のかけ方や歩幅など様々な要素がある。今回紹介する研究は、歩き方によって人を識別することができる未来を創造する尾崎亮太さん(院2)の研究だ。

現代の人間の識別方法として多く普及しているのはカメラやウェアラブル端末を介した生体認証であるが、これらは精度の低さや装着する手間などのデメリットが大きい。そこで尾崎さんが目を付けたのが人の歩行パターンを指す歩容という分野だ。「床に荷重センサーを備えることで、そこを歩いた人を簡単に識別できるだけでなく、性別や年齢、感情など様々な情報を読み取ることができる」と尾崎さんは話す。 

想定している活用法としては学校の入り口に設置することで、生徒の抱いている感情など一見わからないような要素を識別し、教育現場に寄与することなどがあげられる。

このような尾崎さんの研究に「社会実装」への期待を寄せる伊藤教授。「世に出て人の生活をより良いものにすることを研究室のテーマとしている。今回の研究は、高齢になった自分の母を健康面でも犯罪面でも見守ることができるような、困った人に手を差し伸べられるものになればいいと思う」と笑顔で語った。

あまり注目がされていない分野から情報を読み取り、形にしていくことが研究の醍醐味だと話す尾崎さん。その研究過程では、自力で研究分野を調べながら手探りの状態で知識を蓄えていったという。研究を通して実際に触れ、そこから得られる情報を用いて人を支援することが目標だと語る。「将来も、この研究を通して得られた『実際に触れること』の楽しさが感じられるようなものを作りたいと思う。自分の作った目に見える実物で人と人がつながること、人の生活につながるようなものを研究したい」と意欲を見せた。

最後に伊藤研究室について「行ってみると自分の知らなかった世界を知ることができて、とても充実した気持ちになった。また、修士にいかなければ得られなかった評価もたくさん受けることができ、自分への励みにつながった」と楽しそうに振り返った。

歩き方から新しい世界を模索する尾崎さんの研究は、あらゆる側面から人を支援する社会に寄与することだろう。