本学理工学部の研究室から始まったベンチャー企業「青山モータードライブテクノロジー」。本学名誉教授であり、同社代表取締役でもある林洋一さんに、事業内容や同社の歴史について詳しく話を聞くことができた。
青山モータードライブテクノロジーの主な業務内容は、電力を制御、変換、供給するテクノロジーの「パワーエレクトロニクス」の開発である。林さんは日々の業務内容について「パワーエレクトロニクス技術の開発を通して、産業の発展と環境調和を両立させ、人々の健全で豊かな生活の実現に貢献している」と、企業理念を交えながら話した。
会社を創設したのは2006年。当時、本学で研究を進める際、外部から資金提供を受けることもあった。しかし、その資金を学内で活用するには様々な制約があり、研究の幅に限界が見えていた。こうした金銭的な問題を解決するために、会社を創設したという。
2008年に、他の会社から卒業生1名とその同僚1名を正社員として受け入れた。給料を支払うため、林さん自ら営業に奔走して、事業を拡大したそうだ。林さんは当時の状況について「会社が軌道に乗るまでには相当な努力が必要だった」と振り返った。
さらに、人材育成にも力を入れてきた。現在も社員として林さんの研究室出身者が2名在籍し、社内で中心的な役割を担っているそうだ。
現在、同社は電気自動車、エアコンなど幅広い分野で、パワーエレクトロニクス機器の設計・開発を手掛け、顧客から高い評価を受けているという。
今後の展望について聞くと「事業自体は、今まで続けてきたパワーエレクトロニクスの開発をさらに続けていくつもりである。自分自身については、時期を見極めつつ、次の世代に代表権を譲って、開発作業を引き継いでいきたいと考えている。また、引き継ぎ後も更なる発展が続いていくために、必要な人材をそろえていくことが必要だと強く感じている。現在はその後進の発掘と育成が急務となっている」と答えた。
最後に林さんに本学での思い出を聞くと、秋田県の大潟村で行われたソーラーカーレースに参加するために、学生と協力してソーラーカーの製作に取り組んだことを挙げた。「苦労することも、もちろん沢山あったが、それ以上に大変面白い経験ができたため、鮮明に記憶に残っている」と当時を振り返って話した。
林さんの学生を想う情熱が事業の成長を支えてきた。その歩みから、私たちは人の想いが生む可能性の大きさを学ぶことができるだろう。