近年、大学生の間で起業意欲が高まりつつあり、大学生や大学院生が起業するケースも少なくない。こうした中、本学では創立150周年を記念し「青山ビジネスプランコンテスト」が開催された。これは国際マネジメント研究科(以下ABS)の修了生らが主催してきた「アイデアピッチコンテスト」を継承したものだ。今回は、その最終審査会の様子を伝える。

11月30日、本多記念国際会議場には、2部門のファイナリスト6チームが登壇し、優勝をかけたプレゼンテーションに臨んだ。すでに起業を果たした本学学生や、運営を手掛けるABSの院生も参加しており、レベルの高い審査会となった。

今年新たに創設されたアイデア部門では、自由な発想が競われた。20代のアルコール離れに注目した総合アミューズメント施設や、オーバーツーリズム問題を解決する現地のマナーを学ぶアプリなど、多彩な発表が続くなか、優勝に輝いたのは「脳卒中患者の就職支援」をテーマにした、チームNext Phaseだった。

続いて行われた起業部門の発表では、ビジネスプランの実現性や成長性が注目された。

利川京彌さん(済4)が率いたチームは、アパレルとユーザーをレンタルサービスで繋ぐ『衣trip』を発表した。これは、大学生が旅行で感じるストレスを分析し、衣服のパッキング、持ち運び、洗濯などの悩みを一気に解決するものだ。ユーザー側の状況だけでなく、提携するアパレル企業が抱える課題や、メリットも視野に入れた内容だった。また、競合他社やターゲットである大学生に刺さるマーケティング戦略についても検討していた。

他のチームの発表もレベルが高く、結果は、優勝、準優勝に次ぐ特別賞だった。他の2チームに敗れた要因として、利川さんは「実現可能性の部分で負けたと思う。他のチームは、企業とのコネクションや実績があった」と冷静に分析した。

利川さんは高校生の頃からすでに起業に興味を持ち、これまで何度かビジネスプランコンテストへの出場経験もあるなど、学生起業の最前線を走っている。起業を目指す人に向けたアドバイスを聞くと、すでに確立されているビジネスモデルで力を付けることを勧めた。「いわゆる副業と呼ばれる、ライターや動画編集、プログラミングなどに取り組み、スキルを身に付けると良い。簡単に無料で始められるものもある」と話す。これらは低リスクで始められ、学びも得ることが出来ると言う。「ビジネス本で読む内容よりは、はるかに濃いものが肌感覚で得られる」と有効性を強調した。

ABSの研究科長である中里宗敬副学長によると、本学全体でアントレプレナーシップ(起業家精神)の推進に力を入れ、来年度からは新たな授業も始まるそうだ。また、本学での起業を応援する様々なイベントを企画しているという。本学から生まれつつある起業家たち。彼らの挑戦に注目したい。