学生起業という言葉が社会に定着し始めたのは2010年代半ばだろう。大学生や高校生が在学中に自ら事業を起こすという行為に対して、当初は冷ややかな視線や慎重な意見も多かったが、現在では「誰でも挑戦できる選択肢のひとつ」として市民権を獲得し、社会からの支援体制も整備されつつある。

 本学でも青山学院大学らしいアントレプレナーシップ教育の充実を目指し、5月24日にはビジネスアイデア壁打ちイベント「Aoyama0→1 LAB(ゼロイチラボ)」が開催された。

 当日は5組の学生チームがビジネスアイデアを校友起業家へ発表し、実践的なフィードバックを受けた。今回は、SBIインベストメント株式会社取締役執⾏役員CVC事業部⻑の加藤由紀子氏と株式会社ROXX代表取締役社⻑の中嶋汰朗氏がメンターとして登壇した。

 イベントへの注目度は高く、50人を超える観客が来場した。会場となったマクレイ記念館の一角を囲むスタンドテーブルも満席となり、メモを取る人も多く見受けられた。発表した学生たちだけでなく、来場者全員にとって多くの学びの場となった。

 Aoyama0→1 LABは、2回のワークショップと今回のイベント同様のプレゼンテーションを合わせた全3回で構成される継続的な起業支援を行うプログラムである。発表後は、地球社会共生学部の松永エリック・匡史教授をファシリテーターに迎えたパネルディスカッションも実施され、起業家に対する投資判断軸などについて意見交流が行われた。

 学内にはこれ以外にも学生主導の挑戦を後押しする仕組みが複数整備されている。昨年度に創立150周年記念事業の一環として開設された「ビジネスプランコンテスト」は、本学発ベンチャーの育成を目標に掲げ、ネットワークを活かした支援体制を提供している。

 2025年度からは、青山スタンダード科目として複数学部を横断して履修できる、アントレプレナーシップ関連の3科目が新設された。授業と実践型プログラムの両輪が整いつつある。学習・実践・発表の育成サイクルが学内で整備されることは学生にとって非常に重要なことである。今後も本学のアントレプレナーシップ教育の動向に注目したい。