「物語の自動販売機」とは、ディスプレイをタッチすると、物語が書かれたロール紙が印刷されるものである。ランダムで印刷される上、5分以内で読める物語となっているため、一期一会の出会いが簡単に楽しめる。誰でも無料で使用することも大きな利点となっている。


 開発の背景は読書人口減少の実態がある。中莖さんは「本を読めていない、読みたいのに時間がない人たちの読書をするきっかけにしたい」と語った。また、フランスの先行事例にも基づいているそうで、中村(可)さんは「ハーバードや有名な大学にも置かれており、日本でも導入しようと考えた」と話した。


 この開発に携わった中村(明)さんは本学文学部比較芸術学科の卒業生であり、その縁もあって本学に導入することが決まった。中村(明)さんは「本学には何でも体験でき、自由に学べるチャンスがある。物語を通して、いろんな情報を知ることができる物語の自動販売機とマッチしているので、本学を選んだ」と語った。


 現在、本学以外に、東京都のたまでんカフェ、兵庫県のフェリシモ チョコレート ミュージアムにも設置されている。設置後には「物語の自動販売機」目的で訪れる来場者も増えているそうだ。ロール紙が出てくる様子を動画に収めてSNSに投稿する若者も多く、若年層にも支持を得ている。


 「物語の自動販売機」では、主にその場所にゆかりのある作品が提供されるが、本学では事前に取ったアンケートをもとに、本学学生のおすすめの作品や本学学生の悩みにこたえられるような作品が提供される。また、本学学生が書いたオリジナルストーリーもある。学年や学部関係なく、たくさんの応募があったそうで、3人は「物語の中でも断然一押し」と笑顔で語った。


 今後について、中莖さんは「自治体と連携して、今とは全く違う場所にどんどん置きたい」、中村(明)さんは「置いただけの機械にならないためにも、置く場所にも意味合いがある」、中村(可)さんは「若者に読んでほしいから、若者が集まる場所や、遊園地などに置いて、待ち時間に楽しんでもらえるようにしたい」とそれぞれ期待を胸にした。より良いものにするための試行錯誤を重ねていく様子に、3人の熱意が垣間見られた。


 最後に本学学生へのメッセージを聞いた。「物語の自動販売機」を楽しんでほしいと述べたうえで、中莖さんは「いろんな物語を通して、学びにつなげてほしい」、中村(明)さんは「自分が普段読まないジャンルとの出会い、様々なことに興味を持ってほしい」、中村(可)さんは「本は悩んでいる人の解決策を与えるものでもあるので、娯楽として面白いものと知ってほしい」と語った。


 ロール紙には、物語本文のほかに、QRコードも印刷される。オリジナルストーリーの感想などを送ることのできる簡単なアンケートになっているため、ぜひ読んだ際には活用してほしい。