ロボット分野における、世界最高峰の学会『ロボット工学とオートメーションに関する国際会議(以下、ICRA)』。ICRA2024は5月13日から5日間、パシフィコ横浜にて開催され、対面とオンライン合わせて約7300人が参加した。2021年に横浜への誘致が決定し、日本では実に15年ぶりの開催となった。
会場では一流の研究者による講演と、世界中の企業や研究室によるロボットの展示が行われた。本学理工学部機械創造工学科の知技能ロボティクス研究室も、展示を行った団体の一つだ。
知技能ロボティクス研究室は「未来のキッチン」をテーマに、KUKA社との共同展示を行った。キッチンに実装されたロボットは全部で3つ。「制振搬送アーム」と「液体注ぎアーム」、「食材カッティングアーム」だ。今回は、多くの参加者が注目した「液体注ぎアーム」について、研究室メンバーの田口龍之介さん(院2)に解説してもらった。
そもそも「液体注ぎアーム」とは、ボトルに入った液体を、一滴もこぼさずにグラスに注ぐロボットアームのことである。この技術は元々、溶けた金属を型に流し込む「鋳造」の自動化技術の研究であったが、今回のテーマに合わせて改変したそうだ。注ぎの手法は、大きく分けて3つの工程を組み合わせている。
①注がれている液体の輪郭をカメラで撮影し、液体の流速と断面積から流量を計算する
②力覚センサを使用して、注がれている液体の重量から流量を計測する
③ボトルの形をモデリングし、どのくらい傾けたら任意の流量が注げるか計算する
以上が「液体注ぎアーム」の仕組みとなっている。
田口さんはICRAを振り返って「多くの研究者に興味を持ってもらえてうれしかった。会話はほとんど英語だったので難しさもあったが、熱意が伝わったら何より」と話した。
ICRA2024は、約8割が海外からの参加者だった。公益財団法人 横浜観光コンベンション・ビューローによると、参加したインバウンドによる経済効果は10億円超と推測されている。この点では誘致成功のように思えるが、その分会場での日本人の存在感は圧倒的に薄く、ロボット分野における日本の競争力が低下したように見受けられた。
かつては「日本のお家芸」とされ、ハイテク技術の象徴であったロボット分野。日本の国際的地位が再び上昇する日は来るのだろうか。