山岳班は年中通して活動を行っている。日々のランニングやクライミングといったトレーニングはもちろん、隔週の週末に登山をするほか、夏と冬には1~2週間かけて合宿を行う。合宿は山々を渡り歩く「縦走」を行うため、年間の活動の中でも特に大きなイベントだそうだ。

 登山をするにあたっては、より多くの時間と労力を費やす険しいルートを選ぶようにしているという。「学生の一番のメリットは、時間があること。学生だからこそ挑戦できるようなルート選びを意識している」と松浦は語る。最初はなんとなく入部したという松浦だが、今では苦難の先に待つ登山ならではの達成感にハマっているそうだ。

 一方で井之上は、海外遠征に行けることが入部を決めた理由の一つだったという。井之上は「日本山岳会学生部プンギ遠征隊」の総隊長を務め、学生のみでヒマラヤ山脈の未踏峰である「プンギ」の世界初登頂に成功した。この偉業の背景には、井之上の自他ともに認める慎重な性格があった。進むルートにどんな危険があるのか、事前に隊員たちと何度も検討を重ねて挑戦した。

 実際にプンギへの挑戦中に、落石があるかもしれないと想定したエリアを通る際には、隊員たちと連携して頭上を見張っていたことで、軽自動車くらいの大きな落石から避難することができた場面もあったという。リスクを最小限に減らすための慎重な行動が、功を奏したのだ。

 井之上にとって未踏峰への挑戦は「本来の登山」だという。「今は、難しいルートもネットで調べればブログ記事が見つかる時代。エベレスト登山すらも商業化され、ベースキャンプから山頂までロープが張られている。そんな時代だからこそ、未知のルートを自分たちの力で既知のものに変えていく探検的精神を含んだ登山に挑戦したい」と井之上は未踏峰に懸ける思いを語った。そして、本学学生に向けて「大学の四年間は短いようで、何もやらないにしては長い。何かを突き詰めてやるには辛さが伴うが、自分が打ち込めるものを見つけて充実した四年間を過ごしてほしい」とエールを送った。

 最後に、今年度の主将に就任した松浦は今後の山岳班について「登山は他のスポーツに比べて命の危険が伴うので、事故を起こさないことを第一に目指す。その上で、活動を少しずつレベルアップして充実したものにしていきたい」と話した。そして「山岳部は自然が好きな人にぴったりだと思う。登山の辛さを乗り越えた先の充実感を味わいたい人には是非来てほしい」と新入生へメッセージを送った。

 これからもストイックに山への挑戦を続ける山岳部山岳班。ここでの活動は、生涯忘れられないものになるだろう。