コロナ禍となり、誰かと頻繁に話すこともできない日々。ましてや、大学の存在は遠く感じる毎日だった。そんな中で見つけたユーチューブライブがある。それが「はちげんめっ!」だった。月に2回、金曜日の22時から様々なゲストを呼び、その後視聴者からの質問に答える構成となっており、本学と大阪大学の教授、二人が行っているユーチューブライブだ。今回はその「はちげんめっ!」について、どのようなきっかけで始めたのか、ゲストや視聴者について本学理工学部の伊藤雄一教授に話を聞いた。電子版では、紙面には載せきれなかった情報も加えてお届けしたい。

コロナの中で入学した世代にとって、長らく教授とは画面の中の存在であったという人も多いはず。私もその一人だ。しかし、学生だけでなく、大学教員もコロナ禍で戸惑うことが多かったそう。
はちげんめっ!の伊藤教授

コロナ禍となった当初、一人で研究室にいる日々が続いた。学生だけではなく教員もオンラインにより授業をやっても手応えがなく。今までは、学生と話すことが多かったが、一人で仕事をするようになり急に喋ることが減ってしまったそうだ。「今までいろんな人と話していたのに、急に話さなくなったことが寂しかった」。そんな中で現在「はちげんめっ!」を一緒にやっている中村先生とZoomで雑談をしていた際に、学生を呼んだら面白いのではという話になったという。そこで、「教員が駄弁っているのでそれでもよかったら来ませんか」とZoomのURLをTwitter上で公開したところ、いきなりにもかかわらず、60人ほどもZoomに接続したそうだ。予想以上に集まったため、その後ユーチューブライブとして行うことになった。

視聴者の年齢層は幅広く、高校生から60歳くらいまでの人が見ている。中には、中学・高校の先生や大学の先生が見ていることもあるそうだ。

今までのゲストにはロボット学者や民法学者など文理問わず多岐に渡る。また時にはYouTuberやスタンダップコメディアンが登場したことも。ゲストはどのような基準で選んでいるのか尋ねたところ、極力違う分野で自分たちが素人だが、研究者的な視座を持って話せる人たちにしているという。またゲストの方々に対して、「なぜこのキャリア(職業)を選んだのか」は絶対にする質問だそうだ。「大学教授へは、確固たる強い意志をもってここまできたようなイメージがあるかもしれないですが、中には就職が嫌で逃げ回ってきたらここまできたというような先生もおられました。教授も人間であり、全員が常に意識高く生きているわけではないんです」確かに私自身、教授と聞くと高尚なイメージを持っていた。「本当は大学の先生は面白い人が多い。ある意味大学の先生とは道を極めた人。それを伝えるようなライブができたらいいなということも始めたきっかけ」と話してくれた。

特におすすめの回は、ノーベル賞候補の免疫学者、平野俊夫前阪大総長の登場回。研究者の目を通しての人生訓が興味深い。実は、終わった後に二人とも平野先生の熱に当てられてヘトヘトになっていたそう。その後、本人からも興奮して寝られませんでしたというメッセージがあったほど。「人生訓や研究者としてどうあるべきか貴重な回だと思います。チャプター分けをしてもらっているので気になるところからでもぜひ見てほしい」と話してくれた。

ユーチューブライブの後半では、視聴者から募集した質問に答えることになっており、質問は毎回20~30個ほど来るそう。質問の内容は人生の悩み、先輩後輩の悩み、大学院に進学したいなど多岐にわたる。最近では、「相手に彼氏彼女がいるのか分からないから知る方法」という質問が来たことも。コミュニケーションに関する質問も多いそうだ。

はちげんめっ!の魅力

はちげんめっ!の魅力について、また、どんな質問が来たら嬉しいか聞いてみた。「文系と理系の大学教員がざっくばらんに話す機会は珍しいと思います。質問は、しょうもない単純な質問でもいいんです。そのほうが逆に深く考えられる質問であることも。例えば、彼氏彼女がいるか知る方法は身近によくある話題だと思うんです。けれど深堀していくと結構面白い話題で、そこから心理学や哲学の話になったり情報科学を使ったり学問的に考えることもできるかもしれない。基本的にはどんな質問でも答えているので、この質問 をして困らせてやろう、ぐらいの質問が来ると僕らとしても面白いです。ぜひ理系の教授と文系の教授が質問に対してどう考えていくか、科学リテラシーや教員の考え方をぜひみて欲しい。それが見どころだと思います」

今後ははちげんめっ!だけでなく、他の企画にも取り組んでみたいと話す伊藤教授。また、今後呼びたいゲストについて、学生や青学の教員も呼んでみたいと話してくれた。今後にぜひ注目したい。